Readyyy!

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2023.02.03

Readyyy! 第一部完結編 The Gold ~19 moments~ 第1章



大波乱のドラマを生んだ
リアリティーショー『Twinkle of Protostars』。

ライブも終え日常に戻った18人だったが
その日常は、着実に変化の兆しを見せていた。




スタッフ
「――はい、カット!
 一旦映像チェックしまーす」

比呂
「ぬああ〜、ごめんな安吾……!
 何回も噛んで、足引っ張りまくって」

安吾
「いや、気にするな。
 連ドラ初出演で刑事モノは大変だろう。
 専門用語も多い」

比呂
「そうなんだよなー」

「見てくれよー、これ。
 台本、ふりがなばっか!」

安吾
「……『取り調べ』に振り仮名いるか?」

比呂
「いや、オレもさすがに
 それは読めるって言ったんだけどさ。
 うちの佐門先生が勝手に……!」

「ベレー帽刑事の新シリーズに
 出ることになったって言った途端
 アイツの方がそわそわし出してさー」




皆個人での現場も増え
今までオファーのなかったジャンルにも
活躍の幅を広げていた。

ひとりひとりが磨き上げた輝きは
少しずつ大きな光となり、それぞれの
ユニットにとって追い風となる。




スタッフ
「撮影、以上です!
 お疲れさまでしたー」

雅楽・弦心
「お疲れさまでした」

スタッフ
「ああ、そうだ。ふたりとも。
 別件なんだけど……」

「うちから出してる『音楽と夢』の再来月号。
 La-Veritta表紙でいこうと思ってて
 オファー出したからよろしくね」

弦心
「表紙、ですか。俺たちが……?」

スタッフ
「うん。最近、君たちのページがある月は
 評判が良くてね」

「ほら、あの配信番組で
 随分話題になったでしょ? それからかな」

「君たちの音楽論についても色々聞きたいから
 そのつもりで、よろしく」

弦心
「は、はい……!
 ありがとうございます」

「表紙だって、雅楽」

雅楽
「隣にいるんだ。わざわざ反復しなくても
 オレだって聞いてる」

弦心
「ははっ、そうだな」

雅楽
「……番組の反響か」

「自分たちが望むように
 音楽を届けるには、話題性や
 ネームバリューは欠かせない……か」

弦心
「雅楽?」

雅楽
「いや、なんでもない」

「プロモーション期間じゃなくても
 こうして取り上げてもらえるのは
 願ったり叶ったりだ」




凛久
「ちょっと……!
 写真撮るの下手かよ」


「え〜? ぴったし黄金比率だよ?」

凛久
「あー、もう。言い方が悪かった!」

「アートな写真じゃなくて、普通に
 記録用の写真撮ってくれればいいんだって。
 なんも難しいこと言ってないだろ」

プロデューサー
「彗さんたち、賑やかですね」

達真
「ははっ。今日の衣装
 凛久のお気に入りらしいんです」

「あいつ、いっぱい意見取り入れて
 もらえたって喜んでて。それで
 記念撮影でもしてるんじゃないですかね」

プロデューサー
「なるほど。楽しそうで何よりです」

番組スタッフ
「それじゃあ次
 Just 4Uのみなさん、リハお願いしまーす」

達真・彗・小麦・凛久
「はい!」

番組スタッフ
「最近調子いいみたいですね。
 Just 4Uも、他のユニットも」

「あっという間に
 シルバーステージ上位だもんな〜。
 ゴールドステージも目前ですね」

プロデューサー
「あははっ、だといいんですけど」

アイドルA
「はあ!?
 そんなの聞いてないっすけど!」

プロデューサー
「?」

MANAプロ/プロデューサー
「今、言っただろう」

「今回は加入組がメイン。
 お前はサポートに徹しろ」

「新曲も、新メンバーの
 お披露目のためのもの。
 目立つべきはお前たちじゃない」

プロデューサー
「あの子たちって
 たしかMANAプロの……」

番組スタッフ
「ああ、はい。
 もう長くゴールドにいる子たちなんですけど
 最近、新規メンバーを加えたみたいで」

MANAプロ/プロデューサー
「いいか? これも全部お前たちのためだ」

「ランキングも停滞している今
 これまで通りじゃ、ランクアップどころか
 降格する可能性だってある」

「パフォーマンスの強化、新規ファンの獲得。
 そのために今回のメンバー加入がある」

「長く生き残りたければ
 いい加減受け入れて、言うことを聞け」

番組スタッフ
「まあ、プロデュース方針は
 どこもそれぞれですからね」

プロデューサー
「…………」




プロデューサー
「ただいま戻りましたー」





「おかえりなさい」

プロデューサー
「梓さん。帰ってたんですね」

「今日はすいません。
 現場まで迎えに行けなくて」


「いえ。俺は大丈夫です」

秋霜
「ほへもふろふーはーも
 へふっはりはっははらは〜」

淳之介
「いや、なんて!?」


「うーん、これはきっと……
『俺もプロデューサーも
 出ずっぱりやったからな〜』だね」

淳之介
「なんでわかるんスか……!」


「柳川イリュージョンだよ☆」

「でもでも、シュウちゃん。
 もぐもぐしながら
 おしゃべりはめっ、だよ」

「こむぎパパのおしかりポイントだから
 要注意。ねっ、こむぎ」

小麦
「そうですよ……!
 あと、テーブルに肘をついて
 ご飯を食べるのもダメですっ」


「つか、おっさんがここで
 飯食ってんの、珍しくね?」

秋霜
「送迎のついでや。
 食堂のおばちゃんの飯、うまいしな。
 それに、一日動き回ってへろへろやし」

プロデューサー
「今日は本当にありがとうございました。
 もう私ひとりでは、カバーできなくて」

秋霜
「嬉しい悲鳴やん。
 ……まあ、俺とプロデューサーでも
 間に合ってへんけどな」

達真
「免許取れたら
 Just 4Uの移動は俺が面倒見るんで
 任せてください」

プロデューサー
「あはは、気持ちは嬉しいですけど
 さすがにそんなことさせられませんよ」


「いいよなー、車!
 オレ様も早く運転できるようになりてー!」

淳之介
「なーんか急に大人って感じよね〜。
 卒業間際ともなれば当然なのかもだけど」

達真
「中身は全然変わってないけどな。
 お前らだって後輩が入学して来るんだし
 頑張れよ?」


「そうだった!」

「どうすんよ、淳之介!
 新1年生に、伊勢谷先輩かっこいいって
 キャーキャー言われちまったら」

淳之介
「えっ、何それ最高じゃん! モテ期到来!?
 ファンクラブとかできるかな!?」

凛久
「……曲がりなりにも本物のアイドルが
 何言ってんだよ」




プロデューサー
「佐門さん。
 これ、大学から書類が届いていましたよ」

佐門
「ああ、ありがとうございます」

「そうだ。大学側に提出する住所は
 本当にここのままで?」

プロデューサー
「はい。社長とも話し合いましたが
 希望する人は、変わらず
 寮生活を続けていただいて構いません」

佐門
「助かります」

千紘
「あーあ。卒業してくれりゃ
 毎日あの厚顔ゴリラの顔見なくて
 済むと思ったのに」

「なんでアイツまで残んだか。
 出てく制度にしろや」

佐門
「裏を返せば、変わらず3人で
 RayGlanZを続けられるということだろう」

「香坂とふたりになる可能性もあったことを
 考えると、よかったんじゃないのか?」

千紘
「へいへい、ソウデスネ」




プロデューサー

「さて。残りの仕事、片付けちゃうか。
 ええと……」

(雑誌の取材はOKで、このバラエティは……
 十夜さんたちきっといい顔しないだろうから
 保留かな)

(……)




MANAプロ/プロデューサー
「いいか? これも全部お前たちのためだ」

「長く生き残りたければ
 いい加減受け入れて、言うことを聞け」




プロデューサー
(……長く生きていくため、か)

「いやいや……!
 でもやっぱりこれは保留!
 代わりにSP!CAで提案してみよう」

「でもって、こっちのコラボ案件は……」

  プルルル、プルルル

プロデューサー
「……? 社長?」

「はい、もしもし。
 お疲れさまです」

「……え、緊急ミーティング?」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







社長
「や〜、朝から集まってもらって悪いね」

プロデューサー
「いえ、全員のスケジュールが
 あってよかったです」

蒼志
「何か重要なお話なのでしょうか?」

社長
「うん」

「君たちも知っての通り、今月末で
 事業年度が切り替わるわけだけど……」

「正式に来年度……4月から
 アイドル事業部の事業拡大を
 することが決定したんだ」

プロデューサー
「拡大?」

亜樹
「え! Shirasu House、でっかくなるの!?」

雅楽
「……どうして
 そういう考えになるんだ」

光希
「それって……オーディションしたりして
 所属タレントを増やすってことですか?」

社長
「あー、いやいや。
 そういうことじゃないよ」

「君たち18人を大事にプロデュースしていく。
 その方針に変わりはない」

「だからこそ
 もっと手厚くプロデュースできるように
 しようと思ってね」

「まずはスタッフの増員。
 そしてゆくゆくは組織化できるように
 新しく事業部長を立てようと思ってるんだ」

千紘
「ややこしくなりそうでしかねェけど」

十夜
「この人数に対する規模を考えると、妥当だ。
 これまでが特殊だったに過ぎない」

社長
「そうだね。これまでは
 プロデューサーくんにもみんなにも
 苦労をかけたかもしれない」

達真
「でも、それができるようになるって……
 俺たちも順調ってことですよね」

社長
「ああ、そのとおり」

「君たちとプロデューサーくんが
 頑張ってくれているおかげで
 ランキングもどんどん上がってきている」

「各々仕事も増え、活躍の場が広がったことは
 自覚があるんじゃないのかい?」

比呂
「いや〜あ、まあ、たしかに?
 誰かさんも、連ドラ決まっちゃってるし?」

佐門
「ドヤるな」

社長
「というわけで
 今日はみんなに、新しく就任する
 事業部長を紹介しようと思うんだけど……」

タクミ
「プロデューサーさんは?」

社長・プロデューサー
「?」

タクミ
「プロデューサーさんは
 僕たちのプロデューサーのまま?」

社長
「ああ、すまなかった。そうだね。
 君たちにとっては、それが一番大事だ。
 もちろん、私はそのつもりでいるよ」

「まあ、事業部長の意見もあるだろうし
 プロデューサーくんの希望も
 あるだろうけど」

プロデューサー
「もちろん、私だってそのつもりです……!」

小麦
「えへへっ、よかった」

タクミ
「うん、よかった」

社長
「はっはっはっ」

「じゃあ、紹介しよう。
 波多野くん、入って来てもらえるかな?」

  ガチャッ

事業部長
「失礼します」

「はじめまして。
 この度、アイドル部の事業部長に就任した
 波多野です」

「今後の活動に関して、裏で色々
 サポートできればと思うんで――……」




  カタカタカタ、カチカチッ

プロデューサー
(……事業拡大かあ)

(1年前、彼らと
 出会った時のことを思うと……
 本当に大きくなったんだなあ)

(実力も、考え方や姿勢も。
 そして、世間に与える影響力も――)






女子高生A
「えっ! ちょっと、見て見て!
 私の推し、舞台決まったって!」

女子高生B
「蒼志くんだっけ?」

女子高生A
「そうそう。わ〜っ、やば……!!
 ねえ、チケット協力してくんない!?」




大学生A
「お、ドラムの鉄人に
 RayGlanZの曲入ってんじゃん」

大学生B
「いや、ぜってーオマエ叩けないだろ、それ」




小学生
「ママー、これ買って!
 SP!CAのファイルもらえるって」

母親
「ああ、CMやってるやつね。
 ふふっ。本当に好きね〜」




秋霜
「プロデューサー。
 おーい、プロデューサー」

プロデューサー
「! あ、はい……!」

秋霜
「なんやぼーっとして。
 目開いたまま寝てるんか思ったわ」

「これ、頼まれてた買い物。
 ここ置いとくで」

プロデューサー
「ありがとうございます。
 すいません、お願いしちゃって」

秋霜
「ええて、ええて。
 本来はよろず屋やしな」

「なんか考え事でもしてたんか?」

プロデューサー
「ああ、その……なんていうか……
 気づけばすごいところまで
 進んできたんだなあと思って」

秋霜
「なんやそれ。まだまだひとりで
 感慨深くなってる場合やないで〜。
 事業拡大も待ってるし、何より……」

「ゴールドステージが待ってんのやから」

プロデューサー
「そうなんですが……」

「T.O.Pのとき、木虎さんに
 言われたことがあるんです」

「『彼らの一番の理解者であるキミが
 傍にいてくれることが
 彼らにとって何よりの拠り所になる』」

「『彼らを守れるのは”大人”じゃない。
 他の誰でもない、キミだ』」

「『彼らの覚悟、大事にしてあげて』
 ……って」

「もちろんわかっていますし
 絶対に投げ出すつもりもありません。
 でも……」

「これから先、さらに大きくなっていく彼らを
 どうプロデュースしていくのがベスト
 なんだろうって、最近よく考えるんです」

「変わっていく環境と、進んでいく彼ら。
 そんな中で変わらず守り続けるには
 何を選択していくべきなのか」

「……なんて」

秋霜
「なーに、プレッシャー感じとんねん」

「正解のない中模索してきたんは
 これまでとなーんも変わらんやろ」

「一緒に成長しながら
 答え合わせしていきゃいいんちゃうん?」

プロデューサー
「……そうですね」

「すいません、突然。
 ありがとうございます」

秋霜
「かまへんて。
 これもよろず屋の仕事――」

比呂・全
「嘘ーーっ!?!?」

秋霜
「……なんやねん。デカイ声は
 ステージのためにとっとけっちゅーのに」

プロデューサー
「リビングから、ですかね。
 何かあったんでしょうか」





  ガチャッ

光希
「……なんで、そんな突然」

比呂
「てかオマエら
 なんも聞いてなかったのかよ。
 同じレコード会社だろ?」

亜樹
「んー……や、初耳ですね」

佐門
「揺らぐだろうな。
 業界内も、ランキングも」

プロデューサー
「あの、何かあったんですか?」

小麦
「あっ、プロデューサーさん……!
 見てください、テレビ!」

プロデューサー
「?」

「……えっ」

亜樹
「――GALAXY TOKYO
 無期限で活動休止だって」


...To Be Continued